皆さん、おはようございます。いよいよ令和6年大相撲夏場所が始まりました。
大の里の快進撃が期待され、個人的には髙安の悲願の初優勝が期待される夏場所の初日、何と横綱大関陣が(加えて二関脇も)全滅の様相を呈してしまいました!
日刊スポーツ様によると、初日に5人以上の横綱大関が総崩れするのは昭和以降初の珍事だそうです。
その立役者となったのが大の里でしょう。横綱が万全でないのもありますが、果敢に前に攻め続ける立派な相撲で恩返しを果たしました。
横綱が万全だったなら、4大関が相次いで敗れようとも結で土俵を締めていたはずです。いや、並みの相手なら万全でなくとも勝っていたでしょうね。やはり横綱の体調の心配以上に大の里を褒めるべきです。
大の里には相撲内容で周囲の声を跳ね返していってほしい所ですが、二日目には何と悲願の初優勝を目指す髙安との取組が組まれてしまいました…。
大の里のあの当たりを弾き返せるとしたら、好調時の玉鷲か髙安くらいしかいないのではないでしょうか。
個人的には二日目にして優勝決定戦が組まれてしまったような印象です。
さて、今日の取組に勝って賜杯を手にするのはどちらなのか…(←気が早すぎる)
ただ、昨日解説席で舞の海さんが仰っていた様に、髙安は「強いと脆いが同居する不思議な力士」です。優勝が決定するまでファンとしても気を抜けないのがまた、髙安を応援する面白さだったりします。
そして大の里にもそんなきらいがあるように感じます。ここまで類を見ないスピード出世とは言え、幕下・十両でも一度も優勝していない点が気になります。
思えば稀勢の里も「初優勝の壁」には非常に苦労していました。そのDNAが弟弟子・愛弟子へと受け継がれてしまっているのでしょうか…。
しかし、稀勢の里は何度も跳ね返されながらも真っ向から立ち向かい、最後は壁を乗り越えました(その直後に大怪我をしてしまった事が悔やまれてなりませんが)。
髙安や大の里にも同じように壁を乗り越え、頂点を掴み取って欲しいと思います。
それでは個人的に印象に残った取組と横綱大関陣の取組を振り返っていきましょう。
〇剣翔(寄り切り)宝富士●
諸差しを狙って立った剣翔に対して、差し手争いから左四つに組んだ宝富士。その形になるとそのまま前に出て重い相手を赤房下に寄り切りました。
まず体の張りが37歳とは思えません。まったく弛んだ所が無く、特に大腿部は筋肉の隆起が見られます。先場所こそ十両へ番付を落としてしまいましたが、この調子ならまだまだ幕内で取れるでしょう。
左四つになれば大抵の相手には負けない、という己の型を持っている点も見ていて楽しいです。一度左の相四つから稀勢の里に土を付けた事もありましたね。
今日二日目からの活躍も楽しみです。
●玉鷲(押し出し)琴勝峰〇
玉鷲も若々しい相撲で琴勝峰を押し出して白星スタートを決めました。
両手を出していく立ち合いから琴勝峰の右に付き、左のおっつけと右喉輪で強烈に攻めると、琴勝峰も何とか回り込もうとしますが、最後は東土俵で押し出されてしまいました。
この玉鷲という力士は本当に39歳なのでしょうか。スピード出世の19歳の間違いではないのでしょうか…と思うくらいに若々しい体の張りと相撲内容です。
45歳くらいまで幕内で取り続けられるのではないかと本気で思えるくらい楽しみな力士です。
〇王鵬(寄り切り)宇良●
宇良が王鵬に対し、当たって左を差すと一気に赤房下に寄り立てて勝ちました。右腕はやや万歳の格好となっていましたが、構わず前に出る怒涛の攻めで白星スタートを決めました。
怪我を乗り越えて必死に体を作ってきた成果を見られたような取組でした。小兵だったならあそこまで一気に押すのは中々難しかったでしょう。
個人的な話ですが、私が働いている保育園の子どもがおばあちゃんだかおじいちゃんだかが観ている相撲中継を見て、「ピンクの廻しが可愛いから」と宇良を応援しているようです。
今日はその子と楽しい相撲談義が出来そうです。
●翔猿(引き落とし)阿炎〇
俵伝いに逃げ回る翔猿を追い切れずに引き落とされてしまった阿炎でしたが、昨日の取組では決して引かずに前へ前へと攻め続ける姿勢が、見ていてとても気持ち良かったです。
恵まれた体を持ちながら、安易に引いて勝とうとしてしまう事が阿炎の悪癖でもあるわけですが、それが昨日は小兵相手という事もあったのでしょうが全く見えませんでした。
あの様な相撲を取り続ける事が出来れば、阿炎もまた更に上を目指せるはずです。亡き師匠への思いもあって、四股名通りに闘志が燃えているでしょうから、これからまた楽しみですね。
〇若元春(押し出し)髙安●
悲願の初優勝を目指す髙安が、関脇の若元春を破って白星スタートを決めました。
左の相四つの両者、左四つで十分に組み合ったら若元春に分があるのではないかと私は見ていましたが、上手を与えずに最後は離れて取る完璧な相撲で若元春を黒房下に押し出しました。
髙安はその馬力に定評がありますが、無双や捻り技などの器用な取り口も持ち合わせています。決して馬力一辺倒で相撲を取るのではなく、馬力というメインウェポンを活かす為のサブウェポンが豊富にある…と言ったところでしょうか。
本当になぜ優勝経験がないのか、不思議な力士ですね。しかし本人はもちろんファンも初優勝を諦めてなどいません。
例え毎場所期待外れな結果になったとしても、それでも初優勝を信じて応援し続けます。
今場所こそ初優勝です!!
●豪ノ山(押し出し)霧島〇
豪ノ山が立ち合いから一気の出足で大関霧島を白房下へと押し出しました。
霧島も場所前の稽古はそれほど悪くなかったと聞いていましたが、やはり稽古と本場所は違いますね。
そして押し相撲の力士にはこの爆発力があるから、上位にとっては怖い存在ですね。単純な実力や経験を比べたら大関の方が遥かに上ですが、地力が反映されやすい四つ相撲と違って押し相撲では番狂わせが起こりやすいのです。
黒星スタートとは言え、場所はまだまだ始まったばかりです。まずは今日勝って連敗しない事ですね。
〇貴景勝(押し出し)平戸海●
平戸海が立ち合いから一気の出足で大関を赤房下に押し出しました。
平戸海の圧力も素晴らしいものがありますが、大関の不調も伝わってくる取組でした。きっと万全の大関ならもっと踏み込んで相手の土俵で勝負をしていた事でしょう。
力士にとって怪我は付き物ですが、本人はもちろん見ているこちらも辛いものですね…。
これ以上悪化しない事を願うばかりです。
●大栄翔(押し出し)琴櫻〇
横綱だった祖父の「琴櫻」を襲名して臨んだ場所でしたが、いきなりの黒星となってしまいました。
立ち合いからいきなりの大栄翔の右おっつけで横を向きかけてしまった事で焦ったのでしょうか。その後は諸差しに拘らずに突き押す場面もあったものの、再び大栄翔が逆襲に転じると引いて呼び込み、成すすべなく土俵を割ってしまいました。
それにしても、初日に大栄翔戦というのは琴櫻に限らず嫌なものなのでしょうね…。
大栄翔は初日から大関を破って、今場所は気持ちよくスタート出来た事でしょうから、また上の番付を目指していって欲しいですね。
〇豊昇龍(上手投げ)熱海富士●
目の前で3大関が相次いで敗れた中で相撲を取る事となれば、この気が強い大関は逆に闘志を燃やすだろう…というのが私自身の見立てでもあり、舞の海さんの見立てでもありました。
しかし体の大きな熱海富士にまともに組み合ってしまい、得意の下手投げも決められずに寄り切られてしまいました。
あれだけ大きな相手とがっぷり四つになると、如何に大関と言えども苦しいのでしょう。
熱海富士は最後まで左の上手を離さずに良い相撲を取りました。初日から大関撃破という事で、また優勝争いに絡んでいくような活躍を見せて欲しいです。
〇照ノ富士(掬い投げ)大の里●
4大関が相次いで敗れた結の一番。照ノ富士がしっかりと勝って土俵を締める…という結果になる事を信じたファンは多かったことと思います。
しかし蓋を開けてみれば、大の里が真っ向から攻め続けて横綱を腹這いにしてしまいました。
立ち合いは大の里が特に踏み込んでいたという訳でもなく、拮抗していたように見えましたが、そもそも拮抗した時点で横綱の負けだったのかもしれません。
膝、腰、脇腹の怪我に加えて内臓疾患も有する満身創痍の横綱。彼が安心して引退する為には、引退後の角界を安心して任せられるような時代の強い横綱が出て来る事が必須なのでしょうが、総崩れしてしまった大関陣にそれを期待するのは酷なのかもしれません。
そして、大の里があまりにも下積み期間が短いまま大関、横綱へと昇進していってしまうのも懸念すべき事です。
週刊誌の報道が真であれ偽であれ、実際に下積み期間が短いのは事実です。師匠にはそうならない様な指導を、そして本人にも自制をして欲しいと思いますが、下積み期間が短いが故に悪い意味で気持ちが大きくなり過ぎてしまうという事は角界に限らずどこの世界にもある事でしょう。
ましてや番付が全てで「番付一枚違えば家来同然、一段違えば虫けら同然」が今もなお根強く残る角界です。
…とは言え、今場所はまだまだ始まったばかりです。大の里が強い「心」を手に入れる為にも、今後当たる上位陣は必死に壁になってもらいたいものです。
今日(二日目)の大一番
今日二日目の大一番は、何と言っても髙安vs大の里でしょう。
初顔合わせの一番となりますが、巡業では髙安が積極的にぶつかり稽古で胸を出していました。
髙安が会心の立ち合いを出せれば、大の里のあの出足を止める事は可能でしょう。組んでしまえば経験と技で勝る髙安が有利です。また、離れたとしても髙安は十分に取れますから、全体的に髙安有利と言えるでしょう。
しかし怖いのは大の里の若さと勢いです。仮に髙安が立ち合いを失敗したなら、一気の出足で土俵外へと運ばれる可能性も十分にあります。
どちらも応援したい所ですが、髙安の初優勝を期待する身としては髙安の勝利を願っています。そして結果的にこの取組が「事実上の優勝決定戦」と言われることも願っています。
それではまた明日お会いしましょう。最後まで読んでくださってありがとうございました。