おはようございます、大相撲夏場所は二日目を終えました。
注目された髙安と大の里の取組は、終始先手で攻め続けた髙安が大の里を押し出しで破り連勝を決めました。
大の里は立ち合いこそ前に出ようとしましたが、髙安の圧力に屈してしまったのか回り込みながら手繰ろうという様な消極的な相撲になってしまいました。
昨日の記事でも述べたように、場所が終わってみたら結果的にこの二日目の一番が事実上の優勝決定戦だった(髙安が初優勝で大の里が単独1差というような…)という結果に終わって欲しいと思っています。
横綱大関の休場に見る相撲界の怪我問題
注目の取組が盛り上がる一方で、照ノ富士と貴景勝が休場という寂しいニュースもありました。
現役の横綱大関陣に限らず、今までどれだけの力士が怪我で低迷してきたでしょうか。
将来を嘱望されながら入幕してきたのに怪我で平幕から抜け出せない力士たち…。
「すぐにでも綱取りなのではないか」と期待されるほどの勢いで昇進したにもかかわらず、怪我でその座を陥落してしまった大関たち…。
公傷制度の復活は難しいかもしれません。これだけ多くの怪我人がいる中で「番付据え置き」が多発したら番付が死んでしまいますし、「どうせ番付は変わらないから」と安易に休場する力士が増えてしまうと興行そのものが成り立たなくなる恐れもあります。
また、大相撲における公傷制度が我々の社会で言う労災に当たるのであれば、本場所に限らず稽古場だろうが巡業中だろうが、力士たちが怪我をしたのならばそれは「仕事中の怪我」となるわけです。
例えばレジャー中の怪我だったとしても、それが「谷町の接待」や「テレビ番組の収録中」だったならば仕事と見る余地もあるわけです。
それらを「本場所中のものなら公傷」、「それ以外は認定外」としてしまう事は不合理ですし、かと言って全ての怪我を公傷として認めてしまえば先述した様に興行自体が成り立たなくなるでしょう。
故に、公傷制度の復活は現実的な案とは言えません。
では、どうすれば良いのか。
本場所と巡業を減らして、力士たちに体のケアの時間を十分に与える事が必須であると私は考えています。
本場所だけで1場所15日間、それが年6場所で合計90日間。体重150㎏前後の力士たちの真剣の立ち合いは、一つ一つが自動車事故に遭っている様なものです。
その合間に力士たちは、腰に悪いバス移動で各地を転々と回っています。
この状況では体を治す時間など到底ありません。
幕内平均体重が110㎏くらいだったならそもそもの怪我の発生率も今より低く治りも早いかもしれませんが、平均が150㎏以上もあるような状態で場所も巡業も過密している様では、力士たちに怪我をしろと言っている様なものでしょう。
無差別級である事こそが大相撲の醍醐味であるわけですから、当然の事ながら体重制限などをかける事も出来ません。それこそ相撲が「単なるスポーツ」になってしまいかねないでしょう。
本場所数を今の半分に…つまり一場所11日制で年間四場所(東京場所を一回に)ほどまで減らせば、有望な力士が次々と怪我で消えていく現状よりは良い環境になるのではないでしょうか。
長くなってしまいましたが、力士たちの力士生命を尊重する事こそがそれを応援するファンを尊重する事にも繋がると思うので、相撲協会には本気で考えて欲しいと思います。
それでは二日目の(個人の独断と偏見で選んだw)相撲を振り返っていきましょう。
●玉正鳳(寄り切り)伯桜鵬〇
立ち合いから攻めたのは伯桜鵬でしたが、得意と逆の右四つに組み合うと退きながら掬う様な消極的な相撲になってしまいました。
手術した肩の状態だけでなく、部屋の吸収合併に伴う精神的な不安要素もあるでしょう。しかし本来の力を発揮すればもっと上で取れる力士です。
我々ファンは、彼がこの試練を乗り越えようとしているのを応援していくしかありません。
●遠藤(押し出し)東白龍〇
遠藤も先ほど述べた「将来を嘱望されながら怪我によって低迷してしまった力士」の一人ですが、流石に十両の土俵となると地力の違いを発揮してこの場所の連勝スタートを決めました。
怪我が完治する事は無いのでしょうが、上手く付き合いながら一番でも多く勝ち、番付を一枚でも上げて欲しいですね。
〇時疾風(寄り切り)宝富士●
37歳のベテラン宝富士が、27歳の新入幕・時疾風を左をのぞかせながら一気の出足で寄り立てて青房下に寄り切りました。
昨日に続いて37歳とは思えない若々しい相撲で新入幕の挑戦を弾き返しました。所属する伊勢ケ浜部屋に活きの良い若手が増えた事で「俺もまだまだ!」という闘志が燃えているのでしょうか。
今場所はまず5場所ぶりの幕内勝ち越しを目指して頑張って欲しいですね。
●正代(押し出し)琴勝峰〇
諸手突きで立った琴勝峰に対し、正代があてがいながら前に前に攻め、回り込む琴勝峰にしっかりと付いて行き、最後は白房下に押し出しました。
相も変わらずの腰高ではありますが、それでも昨日の取組には一時期の勢いが戻ってきたように思います。この相撲を続けて、また上位で取る正代が観たいですね。
●御嶽海(小手投げ)翠富士〇
立ち合いから押し込み、終始攻め続けたのは翠富士でしたが、御嶽海が一歩も引かずに最後は小手投げで翠富士を裏返しました。
あれだけの体格差で真っ向から押し込む翠富士の足腰も素晴らしいものですが、一歩も引くことなく耐えた御嶽海も素晴らしい相撲でした。
調子が悪い時は安易に引いて墓穴を掘ってしまう御嶽海ですが、今場所は体の張りもありますし、強い時の御嶽海が戻って来た印象ですね。
先ほどの正代も御嶽海も「すぐに綱取りかという勢いで大関昇進しながら怪我でその座を陥落してしまった」という先述の力士たちの一人です。
その頃の勢いを取り戻して、また上位で闘う姿が見たいですね。
〇明生(押し倒し)宇良●
立ち合いで宇良がやや左に動きながら手繰り気味に先手を取ると、その後の膠着した押し合いから絶妙なタイミングでいなして間髪入れずに明生を攻めて正面土俵に押し倒しました。
上がって来た頃の宇良の体重だったなら、膠着状態も作れず、ましてや相手を泳がせるようないなしは出来なかったかもしれません。一歩も引かず、更にいなす様な相撲が取れるのは宇良の増量の努力の賜物でしょう。
いなしや叩き、引きが有効に作用したという事は、一見膠着状態でありながら実際には宇良が押し勝っていたという事です。
私事ですが、私が働いている保育園の「宇良ちゃんが好き」という子どもが今場所は珍しく相撲の話題に食い付いてきているので(今まではそっけなかった)、今日も楽しい話が出来そうです。
●髙安(押し出し)大の里〇
髙安が叔父の意地を見せました。
立ち合い髙安は真っ直ぐ、対する大の里は右肩から当たるような立ち合いを選択しましたが、髙安の左からの圧力で想定以上に左を向いてしまったように見えました。
この事から焦りが生じ、回り込んだり引いたりという消極的な相撲になってしまったのではないでしょうか。
当たりの強さ、そしてその後の出足には目を見張るものがある大の里ですが、同じく一発の強さに定評のある髙安相手には、半身でぶつかることは失敗だったのかもしれません。
実況解説でも場所前の巡業で髙安が胸を出した事が取り上げられ、厳重注意の処分を受けた大の里に対する髙安の愛情だという話が出ていましたが、この取組における厳しい攻めもまた髙安の愛情であると私は考えています。
昨日の記事でも述べた様に、余りにも下積み期間が短いまま番付を上げて行ってしまうと「タコになる(相撲界の隠語で『調子に乗る』という意味)」事があります。そうさせない為にも誰かが壁になる必要があり、横綱大関陣が不調の今場所で、まず髙安がその責任を果たしたわけです。
髙安もまた怪我で陥落した大関の一人です。また同じ地位、そしてその上にまで上り詰めてくれることを期待しています。まずは今場所で初優勝ですね!
〇豊昇龍(押し出し)阿炎●
豊昇龍が連敗となってしまいました。豊昇龍の調子がどうというよりは、阿炎が素晴らしい相撲を取ったとその一言に尽きると思います。
NHKの向こう正面解説席には錣山親方が座っていらっしゃいましたが、阿炎は食事稽古に精を出して増量してきたそうです。
確かに二人の取組を振り返ると、いつも以上に阿炎が大きく映りました。
先代師匠の様な回転の良さに加えて、先月急逝された曙関の様なパワフルな突き押しが出来るようになりたいと阿炎は話しているそうです。
亡くなった先代の墓前に良い報告をする為にも、優勝を目指して突っ張って突っ張って、突っ張りまくって欲しいですね。今場所は髙安が悲願の初優勝を達成する場所なので駄目ですが(笑)
〇平戸海(押し出し)霧島●
平戸海が立ち合いから攻め続け、一時は正面の土俵際まで後退した霧島でしたが、そこから突っ張りで逆襲に転じると逆に平戸海を正面土俵に押し出しました。
負けはしましたが、平戸海の立ち合いからの圧力には目を見張るものがありますね。流石は境川部屋力士です。
霧島もこの白星をきっかけにしてまずは勝ち越しを目指してほしいです。
〇熱海富士(肩透かし)琴櫻●
『琴櫻』が結の一番を締めるという事で、歓喜したファンの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
出来れば横綱が休場したことによる大関としての結ではなく、横綱としての登場が観たいですね。
相撲は熱海富士に何もさせる事無く立ち合いからの前捌きの応酬で肩透かしを決めました。先場所まで三連勝しているという事もあって自信たっぷりに取れたのでしょうね。
膝に不安はあるでしょうが、これ以上悪化させる事無く「これぞ琴櫻!」と祖父の現役時代を知るファンを唸らせるような相撲を魅せて欲しいですね(私は見たことありませんがw)
今日の大一番
今日の大一番は、何と言っても髙安と阿炎の一番でしょう(※個人の独断と偏見で決めています)。
髙安は阿炎を少し苦手としており、更に今場所は阿炎には回り込んだり引いたりしなくとも髙安を正面から押せるだけの圧力があります。
それに対して髙安がどう取るか…。今日も目が離せませんね(残念ながら仕事でリアタイ視聴は出来ないのですが…)。
今日もお祈りしながら仕事に励むとします。
それではまた明日。最後まで読んでくださってありがとうございました。